被災地岩手県大槌町・大槌高校仮診療所での医療活動

平成23523

 

小県医師会の災害医療チームとして、岩手県大槌町へ当院より院長・看護師2名・小林薬局より小林薬剤師様の計4名で53日(火)から58日(日)まで行ってきました。余震による停電の可能性や荷物もあり当院から車で約13時間かかり、実際の活動は同町の大槌高校仮設診療所で行いました。

57日現在の岩手県大槌町の被害状況、テレビなどで報道されているように市街地はほぼ壊滅状態(もちろん医療機関も機能していません)、約5500人の方が非難されている状況でした。

ライフラインは電気・トイレ・水道は復旧、ガスは使えない状態で、報道されている生活と、現地で実際に見た生活はやはり想像を超えるものでした。約2ヶ月たち長い被災生活を余儀なくされ、行き先が分からない現状、今も続く体に感じる余震の不安や恐怖、市営住宅や仮設住居へ入れない人たちの疲労感はかなりのものと思われます。けれども、東北の方たちはとても忍耐強く具合が悪く熱もあるのにも関わらず「何ともない、大丈夫だ。」と我慢をする患者さんも多くいたように感じました。

私達は時間をかけ会話の中から症状を何とかお聴きし治療をさせていただきました。

診療に関して(大槌高校内の仮診療所)

 現在、高校の体育館にいる避難者は273名(5/7現在)です。当初約1000名の避難者がいましたが、4月半ばに別の避難所に過半数が移動し400名となり、その後現在の人数となりました。仮設住宅の建設が始まったばかりで、仮設住宅が完成する7月までこの避難所は維持される見通しです。

  診察時間は9:00〜11:30、午後13:00〜16:00で、16:00以降の患者さんは当直医が診察していました。当直医は青森/長野チームの交代で行なっていました。

 受診者のほとんどは、慢性期疾患や風邪、胃腸障害、長い被災生活での疲労、ストレス、前医処方の継続処方か軽症患者さんが多かったです。しかし、5/4(重症の喘息発作)と5/6(心房細動・肺炎)の日中に緊急搬送する患者さんがいました、あと外傷(第1指)も1名受診されました。当直帯に来られた患者さんも数名いましたが軽傷でした。

器具:心電図・モニター・除細動器・AED・挿管キットなどありました。

 他の診療、検査、治療内容は私たちがいた期間では投薬・インフルエンザ検査・キズの包交・血糖チェック・バイタル測定・点滴・静注・低周波療法・コミュニケーション(心のケア)などの業務を行ないました。

 こちらでの通常診療と違いカルテ検索や物品検索、使える薬も限られており、あるものをいかに有効に使うかがとても難しかったです。

 カルテは、新患では診療用紙A6版を使用し、診察終了時に用紙が複写になっているため看護師が下の1枚を診察券代わりに患者さんに渡します。カルテの記載内容が患者に渡るので、将来仮診療所閉鎖時に紹介状を作成しなくて済むからだそうです。

 再来時はカルテに書ききれないので、新たに2号用紙に記入していました。お薬手帳・血圧手帳もクリアーファイルに入れて薬剤師に渡し、処方内容を薬剤師に記載してもらっていました。

 院内処方は、カルテに処方内容を記載するだけで、処方箋なしで薬剤師が払い出してくれます。しかし定期処方、長期処方はできるかぎり院外処方にしていました。院内処方は律速段階になります。院外処方箋は大槌病院などの入院処方箋で代用していました。院外処方にすると調剤薬局が薬を診察室に配達してくれます。当日配達はさすがに無理なようで、14:00までの院外処方は翌日の15:00に、14:00以降の院外処方は翌々日の15:00に薬が届きますので、その事を患者さんに説明し、同意を頂いて院外処方にしていました。長期処方が可能と説明すると、院外処方を希望される方が大半でした。残薬の全くない患者さんには3〜5日分くらい(仮設診療所の残薬を考慮し)院内処方にして、同時に院外処方箋(最大30日分まで)を出していました。

 朝8:45〜診察室(高校の保健室を診察室としてつかっていました。)で青森・長野、愛知県の保健師チームなどで医療関係者のミーティングがありました。
 
愛知県の保健師チームが、避難所にいる人達の健康状態を把握し、1日1回避難所(高校の体育館)を保健師チームが巡回します、医療行為が必要になれば保健師さん達より依頼がくるようになっていました。

 17:00に釜石駅横のシープラザ釜石でこの地域に展開している医療救護班のミーティングが毎日行われました。私たちも6日に長野チームで参加しました。ミーティングの内容は1日の受診者数と感染症(インフルエンザ、麻疹、感染性腸炎、救急搬送など…)の症例があれば報告します。同時に各地の情報もその時に取得して、翌日8:45のミーティングで伝達しました。院内処方の在庫がなくなれば、この場所で報告し補充もしていました。

  心のケアチームとの合同カンファレンスが週に1回ありました。「世界の医療団」の心のケアチームが、保健師チームと協力して精神疾患の疑われる人をピックアップし、巡回で診療活動を行なっていました。

 4月25日〜再開された仮設診療所(県立大槌病院)は、本来の大槌病院医師と、大阪、長野、沖縄、青森のチームが交代で診療していました。診察室は4診あり、パーティションはカーテンのみです。移動式X線装置や静脈採血検査、動脈血ガス、超音波などが可能で、なるべく同院へ受診するように患者さんへ伝えました。しかし、体育館で避難生活している方達は移動手段が限られており困難な状況ではありました。

院長はこの仮設診療所へ4日、5日の午前診療に長野チームの派遣医師として出向し診療を行いました。

報告:(看護師)若林   

監修:(医院長)岸  秀幸